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天井耐震調査・改修設計

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〇特定天井における現況

東日本大震災において、多くのホールの天井が脱落して、犠牲者が出ました。東日本大震災
の前から、大地震のたびに天井が脱落するしせつはあったため、徐々に危険性が注目される
ようになり、大震災を契機として国交省が法律を改正しました。

もともと天井は内装材であり、構造設計がされていなかったため、十分に検討された上で
施工されたものはなく、この法律改正によってほとんどのホールの天井は既存不適格
(現行法に適合しない)という状態になっています。

特定天井は、天井高6m長超かつ面積200㎡超の「吊天井」が該当しますが、
なぜこの数値が決められたかというと、面積200㎡を超える大きな天井は、小さなものより落ちやすく、
かつ6mより高い位置から落ちて人の頭に当たると、致命傷になるためです。

法が平成26年4月に施工されてから、この間に天井の耐震対策の行われた文化施設は
まだ少なく、多くの自治体ではまず学校の体育館、講堂、屋内プール、武道場などの
対策を先に行っている状況です。
文化施設の対策が遅れている原因のひとつに、ホールの様な複雑な形の天井では、
告示に対応したものに改修するのが難しい、という背景もあります。

〇改修方法について

天井の耐震改修には、大きく2つの方法があります。
ひとつは既設天井を撤去して張り替える方法、もうひとつは既設天井を補強して告示に対応する方法です。

吊天井のまま告示に対応させる方法としては、次の3つのルート(方法)が規定されています。

①仕様ルート:一定の基準を満たす仕様に合わせて天井材を構成する方法

②計算ルート:水平震度法あるいは簡易スペクトル法などを用いて、吊り元の構造体の振動
加速度を計算し、それに対応した斜め材、連結金物、天井周辺の隙間などを設ける方法

③大臣認定ルート:特殊な数値計算や実験などを行い、天井材が落ちないという検証を行って
国土交通大臣の認定を受けるもの

条件を満たせばどのルートを使ってもよいのですが、ホールの場合、仕様ルート(平米20kg以下)
や計算ルート(吊りボルトの長さは概ね均一)の条件に適合しない場合が多く、従って大臣認定
ルートを使わざるを得ないという状況です。しかし、大臣認定ルートで承認を得た事例は全国で
まだサントリーホールの1例しかなく、非常にハードルが高いと思われています。

法の施工以降に新築でホールを作る場合は、告示の対象となる特定天井にならない様に、天井の
形なりに鉄骨でブドウ棚をつくり、そこに天井材を直張りするという工法が多く用いられています。
改修の場合でも、既設天井をすべて落としてこの準構造直張り天井にする例が出てきています。

しかし、この工法は長い工期と高い工事費がかかり、施設を所有する自治体やホールを運営する
指定管理者に取って、好ましいものではありません。
できれば、張り替えをせずに既設の天井を活かして、補強により現行法に適合するように、
大臣認定を取得することが望まれます。

既設補強による改修工事が可能になれば、張り替えに対して工期は半分程度、工事費に関しては
半額以下になるものと思われます。
実際に大臣認定を受けるための検証が難しい原因となっているのは、以下の3点です。

①超高層ビルの構造設計などで使われる時刻歴応答解析(地震動を入力して建物の振動応答を分析
する計算法)が必要となるが、特定天井の地震動応答解析を行うにあたり、天井下地の様な細い部材や面材を
モデル化して、シュミレーションすること自体が困難である。

②シュミレーションモデルを作成するための3次元情報が、通常の図面からは得られないため、吊りボルト、
空間ダクト、軽量鉄骨下地などの現況を詳細に調査する必要がある。たいていのホールの天井裏は、狭い、人が隅々まで歩いて行けない、ダクト等で遮られ、全体が見通せない等の理由で、調査が大変である。

③吊りボルトと野縁受けや野縁を接合する強度のデータが不明である。

弊社ではこれらの課題について、改正法が施工された2年前から解決方法を模索してきました。
その結果、現在では大臣認定を受けるための見通しをつけております。

〇特定天井の改修方針について

・調査(天井調査)

振動解析をするためには、まず既設の天井下地金物やダクト類がどうなっているのか、という事を
詳細に調査する必要があります。多少時間と費用が掛かりますが、ここできちんとしたデータを
得られないと、シュミレーションをきちんと行えなくなってしまいます。

また、音響測定による調査を行って、現状の音響特性を把握するとよい場合があります。天井は
音響性能をよくするために大切な役割と担っているので、音響特性がよければそれを維持する
改修方針とし、そうでない場合はそれを改善する方法を考えていくというものです。

・解析と補強

調査で得られた吊りボルト、野縁受け、野縁などの位置情報を、数値化してコンピュータ内に
3次元の天井モデルを作成します。そして時刻歴応答解析によって地震波でゆらしてみて
その損傷の度合いを確認します。
地震波は、地盤と建物の正常により吊り元スラブの応答を求めて作成します。
強度が不明の金物については、単調引張試験で強度を求めてシュミレーションに使います。

公示波レベル1(稀に起きる地震)の地震でも壊れなくなるまで、、このモデルによる補強と
シュミレーションを繰り返します。その振動解析により得られた補強案を、補強構造図にします。

・まとめ

検討結果を総括し、既設天井の補強により大臣認定の取得が可能かどうか考察を行い、報告書
としてまとめます。

弊社ではこの様な手法で、張り替えではなく既設補強により、大地震でも壊れない安全な天井に
改修することを最優先の方針にしています。

既設補強により告示対応ができれば、工事費が安くなると共に、工期の短縮も可能となり、
所有する自治体、ホール管理者、利用者など、すべての方々にとって最も望ましい改修工事
となるものと思われます。

TEL 03-5695-9303 9:00~17:30(月曜~金曜)

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