客席床仕上げ
客席の床も痛みやすい場所です。
一昔前のホールはカーペットが大半でした。
改修の際によく出る御希望が、フローリングにならないかというお話。
確かに最近の音楽専用ホールでは木製床のところが増えました。
木製床に変更するのに不可能という事はほとんどないのですが、
利用実態をよく考える必要があります。
それは木製床の方が観客のマナーを要求されるということなのです。
通路を歩く際には、当然カーペットよりも、フローリングの方が足音が響きます。
堅い靴をはいた方が、クラシック演奏会で遅れて入ってきて無神経に通路を歩き回ったら、
相当周囲は迷惑でしょう。
また椅子に置いてあったパンフレットが床に落ちただけでも、
木製床では大きな音がしてしまいます。
そういった物音に対しては、カーペット敷きの方が気楽なのです。
またカーペットをフローリングにすると、吸音力が落ちますので、
ホールの響きが長くなります。
多目的ホールの場合は、改修において響きを少し長くしたいという御希望が多いので、
その場合はフローリングへの変更も響きの変更要素に入れて良いでしょう。
しかし、カーペット敷きだからといって、
かならずしもそれが響きの悪い原因になっているとは限りません。
客席が聴衆で埋まってしまえば、
床仕上げの差による影響は出にくいからです。
通路部分だけは聴衆で覆われませんので、
比較的響きに影響が出やすいと言えます。
そこで、通路は足音や吸音性能のことを考慮してカーペット敷きのままとし、
客席椅子部分の床のみをフローリングもしくはビニールシートに変えるという選択肢もあります。
現状において特に不満が出ていない場合は、
変更によって前の方が良かったという批評が出やすいので、
床仕上げの変更は慎重に行って下さい。