遮音性能
大ホールと小ホールをふたつ持っていたり、
練習室、リハーサル室などをたくさん備えているホールでは、
同時使用による音の漏れが気になる場合があります。
30年以上前には、遮音性能を確保するための防振ボックス構造(※1)などは、
まだあまり一般的ではなかったので、ふたつの部屋を物理的に離せる距離により、
遮音性能にも限界がありました。
しかし、電気楽器を多用するロックコンサートや、最近ではJポップにおいても、
昔とは比べものにならないくらいの音量で拡声するようになったので、
60~70dB程度の遮音性能では満足できないケースが増えました。
一方のホールに音量が大きいと予想されるイベントが入った場合は、
音漏れを懸念してもう一方のホールを貸し止めにしたり、
音漏れを事前に主催者に通告して承諾を得たうえ会議のみに使ったり、
各ホールとも運用で苦労しているようです。
改修において遮音性能を向上させたいという御希望がある場合でも、
ふたつの部屋の物理的距離を変えることはまず不可能ですので、
大ホールと小ホール間の場合は特別な遮音上の欠陥が無い限り、
飛躍的な改善というのは望めません。
しかし一方がリハーサル室や、小さな練習室である場合には、
内壁が30cm程度内側に入ることを許せる寸法があれば、
防振ボックス構造の採用により、10~20dBの遮音性の改善が望めます。
特に市民の文化活動が盛んな地域では、
練習室が足りずに、リハーサル室を独立して貸し出す運用をすることがありますが、
リハーサル室がホールと同じ主催者に貸し出す事を前提に設計されていると、
独立して貸し出すためには遮音性が不足する場合が多いでしょう。
また、主ホールの楽屋動線がリハーサル室へのアプローチと切り離されていないために、
有名アーチストの楽屋に一般のリハーサル室利用者が行ってしまうというトラブルが起きる可能性があります。
結局そういった問題により、
リハーサル室が効果的に運用されていないのであれば、
遮音性能の改善とアプローチの分離により、
独立して貸し出せるスペースを増やすことは、
会館にとっても望ましい改修ではないでしょうか。
リハーサル室は比較的大きめに作られている場合が多いので、
防振ボックス構造の採用により、こういった改修も可能です。
また楽屋が足りないケースで運用上の問題がよくでる場合には、
リハーサル室を楽屋としても転用できるような改修も効果的です。
その他、舞台の搬入口のような大型の扉は、
経年変化により遮音性能が落ちている場合がありますので、
調整や扉の更新によって回復する場合があります。
調整室の窓や、親子室の窓など、
元々の遮音性能が低かったために、
運用で気を使っている場合などは、
サッシュの交換により比較的簡単に遮音性能を上げられるでしょう。