残響時間
ホールや劇場の音響性能の中で、
響きの長さの指標である残響時間はよく知られています。
一般的に、講演や式典、演劇などの明瞭度が求められる演目では短めが良く、
クラシックや合唱などの電気を使わない音楽では長めが良いと言われています。
日本の自治体によって建てられたホールは、
ほとんどが多目的ホールであり、
式典からクラシックコンサートまでひとつの空間で行う必要があったため、
中庸の残響時間に設定している場合がほとんどです。
現状で響きの長さに問題がなければ、
改修後もあまり長さが変わらないようにすべきでしょう。
しかし、近年クラシック音楽専用ホールが増えたため、
聴衆の耳がこえてきて、
多目的ホールの短めの響きではあまり満足できなくなっている傾向があります。
それでクラシックコンサートを定期的に主催しているホールなどでは、
改修の際にもう少し残響時間を長くできないかというご相談がよくあるのですが、
むやみに長くしてしまったのでは、
式典のお話が聞き取れなくなってしまうという恐れが生じるのです。
残響調整装置などを新たに設置できるほどの予算は取れない事がほとんどなので、
クラシックファンも大満足となるような改修とすることは無理でも、
ホール内装や椅子の工事があるのならば、ある程度響きをのばす事は可能です。
ただし、多目的ホールにふさわしい響きの範囲を守ることと、
多少響きが長くなっても十分な明瞭度が確保できるような電気音響設備の更新は不可欠です。
響きを変える事については、ホール改修における大変デリケートな問題ですので、
慎重に検討しなくてはなりません。