明瞭度
ホールにおける音響性能で、
響きの長さ(残響時間)に継いで問題とされるのが、聞き取りやすさ(明瞭度)でしょう。
多目的ホールで適切な長さの響きであれば、
聞き取りにくいというクレームが発生することはあまりありませんが、
ホールの規模が大きくなるにつれて、
拡声や生声による公演(歌舞伎、現代劇)が、難しくなってきます。
音響反射板を組んだ状態で、観客が少ない時などは、
ホールの残響時間が最も長くなっているので、
拡声にも注意が必要です。
客席後部からのロングパスエコー(直接音に続いて大きな遅れ時間で反射音が返ってくる現象)が、
明瞭度を阻害している場合もあるでしょう。
現状のホールで極端な音響障害ではないにしろ、
そういう問題があると認識されているようでしたら、
改修前に一度調査される事をお奨めします。
それほど大がかりな内装の改修をかけなくても、
音響障害の原因を取り除く事ができるかもしれないからです。
また、音楽専用ホールで残響時間を長めに設定しているホールでは、
アナウンスや舞台上での解説などがどうしても聞き取りづらいという印象をお持ちかもしれません。
こういった空間でも、舞台音響設備により、適切なスピーカを適性位置に置けば、
十分聞き取れるようになるのです。
試しにトランペット型の手持ちの拡声器で舞台上から客席に向けて話してみて下さい。
この明瞭度が常設の拡声設備よりすぐれているならば、
十分改善の余地があることがお分かりいただけるでしょう。
2000人規模の音楽専用ホールの残響時間は、
だいたい2秒程度ですが、これより規模の大きい東京ドームでは、約5秒、
新宿のNSビルのアトリウムではおよそ10秒の残響時間となっています。
しかしどちらの空間でも電気音響による拡声でコンサートもすれば、
スピーチもできるのです。
コンサートホールにおける明瞭度の問題は、
適切な舞台音響設備の導入によって避けられることなのです。